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ひきこもり当事者のライフプラン

最終更新: 11月8日

福祉分野専門のファイナンシャルプランナーをしていると、認知症の方のご家族、障害者ご本人、ひきこもり当事者もしくは親御さんからの相談を受けます。


今日はひきこもりの方のライフプランの作り方をお話したいと思います。


(目次)

1.資産のたな卸し

2.負債の確認

3.純資産残高の確認

4.キャッシュフロー表とは?

5.国民年金の免除・減免申請

6.自立支援医療(精神通院医療)

7.高額療養費制度

8.障害者手帳

9.障害年金

10.生活困窮者自立支援制度


そもそも、ひきこもりとはどのような状態の人を言うのでしょうか?

厚生労働省によると、「仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6か月以上続けて自宅にひきこもっている状態」を「ひきこもり」と呼んでいます。

(参照:厚生労働省


現在では「8050問題」と呼ばれるように、80代の親の収入(主に年金収入)で50代のひきこもりの子を支える状況があります。人生100年時代と呼ばれる昨今、「9060」「10070」が一般的になる時代もすぐそこに来ていると言えるでしょう。


資産のたな卸し


さて、ひきこもりのライフプランを作るときに先ず行うのが、親の資産のたな卸しです。どのような資産があるのか、全て書きだして頂きます。

(例)

(1)預貯金

(2)有価証券・・・購入した時の価格ではなく、現在の価格「時価」で記入します

(3)保険・・・保険証券をもとに保障内容を書き写す(特に死亡保障が重要→親なきあとの資金になる為)

(4)不動産価格・・・国税庁のホームページから路線価を調べ、不動産価格を調べる

※路線価の調べ方は、国税庁令和2年分財産評価基準を見るを参照してください。路線価は千円単位で表示されているので、「200」という単位になっていたら、1m²当たり20万円ということになります。この20万円に土地面積をかけ、0.8で割るとおおよその売買価格の相場になります。


おおよその売買価格=路線価×土地の面積(m²)÷0.8


負債状況の確認


次に負債状況を確認します。

(例)

(1)住宅ローン

(2)自動車ローン

(3)カードローン

(4)分割払い・リボ払い


資産ー負債=純資産残高


なんだか、株式投資や簿記の授業のようですが、この純資産残高が多いほど家計に余裕があるという事になります。個人バランスシートとも呼べますね。時価で記入してください。


次に現在の家計費をチェックします。家計簿をつけていない方は、スマホのアプリなど簡単に家計簿をつけれるものがありますので、利用してみてください。3ヶ月程度つければ、大体の家計の支出傾向がつかめます。できれば、自動車税や固定資産税、家電などの買換え費用、冠婚葬祭などの特別出費も加味できるとより正確にお金の流れを掴めます。


家計費が毎月黒字なら、純資産残高が増える

家計費が毎月赤字なら、純資産残高が減る


ということになります。

家計収支が赤字になっている場合は、まずは親の生活から赤字を減らす努力が望まれます。


ここまでで、現在の財産状況が分かり、ライフプランを作るにあたっての半分が終了しました。


ここからは、現在の資産が将来どの程度までもつのかを見てみたいと思います。


キャッシュフロー表を作る


皆さんはキャッシュフロー表をご存知でしょうか?

キャッシュフロー表とは、現在の収支状況と今後のライフプランを基に、将来の収支状況を予想し、その結果増減する貯蓄残高の推移を時系列にした表です。


キャッシュフロー表では、現在および将来の年間収支とそれに伴う貯蓄残高の推移を一覧できるため、今後の家計の体力をある程度把握することができます。


例:キャッシュフロー表


上記のようなキャッシュフロー表を作成するのは、かなり労力が必要です。

Excelが得意な方は、是非チャレンジしてみてください!

でも、Excelは苦手・・・という方にお勧めのサイトがあります。


それは、金融広報中央委員会の知るぽるとというサイトです。

知るぽるとは、お金に関する情報提供サイトで、日本銀行の情報サービス局が運営しています。サイト内には生活設計を診断してみよう!というコーナーがあります。


これは、上記で記したキャッシュフロー表を質問に答える形式で簡単に作れるので、とても便利です。


知るぽると 生活設計を診断してみよう!はこちらから


コツは、先ずは親御さんのキャッシュフロー表を作り(ひきこもり当事者との生活費も含む)、金融資産残高の推移をみてください。しっかり※平均余命までお金が残っていれば、そのお金はお子様に相続させることができます。


次に親御さんの※平均余命以後のお子様だけ(ひきこもり当事者)のキャッシュフロー表を作ります。そのキャッシュフロー表で、お子様の平均余命まで金融資産残高があれば、親なきあとも生活ができると言えます。親なきあとの生活費の見当がつかない場合は、下記の

※ひとり世帯標準生計費(人事院の資料)をもとに作成してください。


※平均余命とは

「ある年齢の人が、あと何年生きることができるのか」を表している期待値です。

具体的には下記の表になります。

例えば80歳の男性の平均余命は下記の表では、平成29年現在「8.95」です。これは現在80歳の男性が88.95歳まで生きる可能性があるということを示しています。





※ひとり世帯標準生計費(月額 単位:円)


食料費    26,020

住居関係費 48,300

被服・履物費 2,430

雑費I 35,120

雑費II 8,320

合計 120,190

(注)

「住居関係費」には、光熱・水道、家具・家事用品の両費目を含む。

「雑費I」は、保健医療、交通・通信、教育、教養娯楽の4費目の合計。

「雑費II」は、その他の消費支出(諸雑費、こづかい(使途不明)、交際費、仕送り金)。


                      資料:人事院「人事院勧告」平成31年4月


どうでしょうか?ここまでの作業で、親なきあとの生活資金を賄えたでしょうか?

もし、お子様(当事者)の平均余命まで資産が足りない場合の福祉サービスを最後にお伝えしたいと思います。


国民年金の免除・減免申請


2020年度の国民年金保険料は2019年度より130円アップして、月額1万6540円となります。失業した場合や収入が少ない場合はかなり高額の負担になります。保険料を払う経済的な余裕がないから何も手続きしないでそのままにしている方いらっしゃいませんか?


もし、経済的に厳しくて国民年金保険料を払う余裕がない場合は、免除や減免の申請をしてください。全額免除は国民年金保険料を全く払い込みませんが、保険料を半分払った扱いにしてくれます。(年金の半分は税金で賄われている為)


自立支援医療(精神通院医療)


精神疾患で通院の場合、一般の方であれば公的医療保険で3割の医療費を負担しているところを1割に軽減できる制度です。それが自立支援医療(精神通院医療)になります。


この制度の対象は、統合失調症、鬱病、双極性障害、てんかん、発達障害などがあり精神科医が「重度かつ継続的な治療が必要」と判断した人になります。


精神疾患・精神障害や、精神障害のために生じた病態に対して、病院又は診療所に入院しないで行われる医療(外来、外来での投薬、デイ・ケア、訪問看護等が含まれます)が対象となります。


高額療養費制度


高額療養費制度とは、年齢や収入に応じて決まっているひと月の医療費の自己負担限度額を超えた場合、その超過部分を払い戻すという保障です。高額療養費制度を知らずに、それでカバーできるはずの医療費を自己負担してしまうのは本当にもったいないことです。


ざっくり言うと平均的な年収世代だと月額9万円弱が自己負担(自分で支払う医療費)で、超過分は申請すれば戻ってくる制度です。この制度も申請をしないと戻ってきません。

※非課税世帯の自己負担限度額は、35,400円です。


障害者手帳


お子様(当事者)が精神疾患の場合、障害者手帳を持つのに抵抗がある方もいらっしゃると思います。しかし、持ってみると色々なサービスを受けることができます。どのようなメリットがあるのか少し紹介してみます。


障害者手帳を取ると、所得税、住民税、相続税、贈与税、などの減免や非課税、各種自動車税、個人事業税などが割引または控除されます。


就労面では、企業等での就労を目指すにあたり、障害がある人向け雇用枠である障害者雇用枠(オープン枠)の求人に応募することが可能になります。


仮に会社を退職した場合でも、一般枠の方よりも長期間、雇用保険の基本手当(失業手当)を受けることができます。障害者である離職者は「就職困難者」に分類されます。就職困難者は基本手当(失業手当)の受給要件が緩和され、受給できる期間も一般被保険者よりかなり長いのが特徴です。


受給できる期間は被保険者であった期間と年齢によって変わりますが、就職が困難であるため最低でも150日というかなり長い期間で受給可能です。(被保険者期間が1年以上で45歳未満は300日、45歳以上65歳未満は360日受給可能)



また、バス、電車、タクシーなどの公共交通機関は精神障害者保健福祉手帳を提示することにより割引、減免になる場合があります。


携帯電話の割引もあります。docomo、au、softbankなど携帯会社による基本料金の割引制度があります。


障害年金


統合失調症、妄想性障害、鬱病、双極性障害、てんかんなど病気の状況によっては、障害年金で経済的な保障が受けられます。加入している年金や病気の経過などにより手続きは異なります。


障害年金は、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。


障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」があり、病気やケガで初めて医師の診療を受けたときに国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。


初診日から1年6ヶ月後の時点で、障害程度が一定の重さである場合に申請できます。初診の診療科は精神疾患であることが確認できれば精神科でなくても構いません。また1年6ヶ月後の時点では該当しなくても、その後障害の程度が重くなった時にも申請できます。


尚、障害年金の更新時に障害等級に該当せずに障害年金の支給が止まることがあります。支給が止まっても障害年金を受けていた権利は消滅していません。65歳になるまでは受給権は残っていますので、体調が悪くなった時には診断書と支給停止事由消滅届を提出することで支給が再開されます。


生活困窮者自立支援制度


生活困窮者自立支援制度は、「現在は生活保護を受給していないが、生活保護に至るおそれがある人で、自立が見込まれる人」を対象に、困りごとにかかわる相談に応じ、安定した生活に向けて仕事や住まい、子どもの学習などさまざまな面で支援するものです。


相談窓口は、都道府県および市の福祉担当部署や社会福祉協議会、社会福祉法人、NPOなどに設置されます。自治体によって設置される機関が異なることがありますので、相談窓口の連絡先については、お住まいの都道府県や市町村にお問い合わせください。


調べてみると、使える福祉サービスも多いと思います。政府はひきこもり対策として、ワンストップで解決できる機関の設置などに予算をこれまでより多く計上しています。行政機関もこれまで以上に力を入れてひきこもりに対する支援をすると予測されます。私の事務所がある東京都中野区は地域包括支援センターが医師や看護師などとチームを組み、ひきこもり支援(アウトリーチなど)を行っています。


今回ひきこもりの方のライフプラン作成から福祉サービスまでをご紹介しましたが、私自身は、とにかく「あきらめない」ことが重要だと思っています。あきらめないこと=攻めの構えと捉えて、まずはお金のことをきっちり話し合って頂きたいと思います。